さようなら、お別れしましょう
 剣を抜くと、薔薇の花よりも赤い血が流れ、それが土を赤く染めた。

「今すぐ、医師を! 父上、約束が違う! 俺が勝てば、王の力を継承しないと約束しただろう!?」
「もう遅い。ジグルズ、自分の瞳の色を見てみろ」
「瞳……?」

 父に言われ、とっさに噴水の水面に目をやった。
 母の血の色のような赤が、瞳を染めていた。

「……嫌だ。絶対に嫌だ! 俺は王にはならない!」

 王にならないと決めた俺に、父が失望し諦めるまで、数年を必要とした。
 父は王の力を使わない俺を憎み、戦場へ送った。
 父がわざと俺を危険な目にあわせ、力を使わせようとしていたのはわかっていた。
 だが、俺は一度も自分のために力を使わなかった。

 ――王の力は犠牲を必要とする力。

 俺はずっと使わないと決めていた。
 何度、自分が死にかけようと、絶対に使わなかった力。

『私は生きることを諦めたくないんです!』
 
 生きたいと、俺に必死に訴えたレフィカ。
 レフィカを助けたいと思った瞬間、その誓いを破ってしまった。
 後悔すると思ったが、後悔はしていない。
 なぜなら、レフィカ。
 君が生きているからだ。



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