さようなら、お別れしましょう
 改めて、ジグルズ様は私に言った。
 私の心臓にもう【契約】は刻まれていない。
 胸が苦しくなるのは、【契約】のせいじゃないとわかってる。

「私……。ずっとジグルズ様に言いたかったことがあるんです」

 ――やっと私は自分の想いを伝えられる。

 運河の水面に花火と私たちの姿が映る。
 あの時、言えなかった言葉を今なら言える。

「ジグルズ様が好きです。私の家族になってください」
「家族か」
「家族を持つのが、私の夢だったんです」

 ――私の望みは自由。夢は家族で暮らすこと。望みと夢は違う。夢は儚く、遠いもの。

 ずっと叶わないと思っていた私の夢。 
 ジグルズ様は私の手を取ると、ポケットから銀色に光る指輪を取り出してはめた。
 
「指輪……」

 それは、私がもらえなかった妻の証だった。

「レフィカ、一緒に夢を叶えよう」
「はい!」

 ジグルズ様は私に手を差し出した。
 そして、私に言った。

「明日から、俺は領地内の他の町や他国を巡るつりだ。一緒に来てくれるか?」
「もちろん、ご一緒します」

 差し出された手に私から触れると、ジグルズ様は微笑んだ。
 草原の先、山の向こう、海の果てまで、私はあなたと旅をする。
 自由になった私は、あなたと共に歩むでしょう――どこまでも。
 
 【了】
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