さようなら、お別れしましょう
 自分から『妃です!』と言わなければ、ただのドーヴハルク人としてしか、認識されない。
 たしかにそうだと思ったのか、ジェレンは黙ってしまった。

「この町は本当に異国の人が多いですね。シャルク・ホジャを旅行先に選んで正解でした」
「そうですか? 雑多で忙しなくて、あまり旅行先としてはふさわしいようには思えませんけど……」

 ジェレンが想像していたのは、贅沢でのんびりできる旅だったようだ。
 でも、私はのんびりするつもりはない。

 ――異国の人間が多く集まる場所なら、イレーネお姉様の情報を手に入れやすいわ。

 イレーネお姉様が生きていると仮定して、私は考えた。
 もし、私が隠れて暮らすなら、目立たないよう異国人が多い場所を選ぶ。
 それで、ここシャルク・ホジャを最初の旅行先にしようと思ったのだ。
 
「雑多に見えるかもしれませんが、まだ成長途中の町ですから、仕方ありません」

 人だけでなく、建設中の建物も多い。
 住む場所が足りず、土地も整備中のところがある。

「どうして、こんな栄えているのでしょう? 王都より賑やかに見えますわ」
「そうですね。王宮の学者から聞いた話によると、シャルク・ホジャでは商売をする際、税を徴収せず、自由に商売をさせているらしいですよ」
「税を?」
「それも、この都市の中では場所を選ばず、自由に商売をしていいそうです。商業都市と呼ばれるだけありますね」

 運河を流れる船の上で魚を売るだけでなく、日用品を売る船が行き来する。
 船に乗ったまま、船員は必要なものを購入している。
 そして、運河の雄大な流れを眺めながら食事できる船上レストランなど――この都市でしか見られない光景があった。
 普通の家であっても、看板がかかっていて、『焼き立てパンあります』とあり、近くで働く労働者がパンを買いに行く。
 私でも、すぐに商売が始められそうだ。

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