さようなら、お別れしましょう
強固な石造りの建物は、大勢の人間を避難させることができる。
――兄上は優秀だ。だが、まさか兄上が俺の妻を気に入り、屋敷へ連れ去るとは……
屋敷に到着し、俺の顔を見た門番は驚いていた。
「俺の顔がわかるなら、どけ!」
「な、なぜ、陛下が?」
「門番ごときが、王である俺に直接口をきくな!」
兄上はどうか知らないが、俺は身分をわきまえない人間は嫌いだ。
門番はにらまれ、怯えた様子で門を開けた。
「陛下!?」
「えっ? 陛下がこちらへ? おひとりで?」
扉の先に、兄上の配下が大勢いるのを確認し、町の噂は本当だとわかった。
どうやら、兄上は屋敷にいるらしい。
「俺の妻がいるだろう?」
「……レフィカ様のことでしょうか?」
赤い髪をした異民族の女が前に出る。
兄上に母子で救われ、それ以来、兄上に絶対の忠誠を誓っているゼリヤという女だ。
身のこなしが軽く、武器の扱いがうまいと聞いている。
「レフィカ様はジグルズ様とご歓談中でございます」
レフィカと兄上以外、その場に誰もいないということだ。
――まさか、浮気か!?
「陛下! お待ちくださいませ!」
「やましいことがないなら、俺を止めるな!」
――わからない。兄上が王にふさわしくないというのなら、誰がふさわしいというのだろうか。
勢いよく扉をバンッと開けた。
扉の向こうに兄上とレフィカが、二人きりでいるとわかっていた!
「兄上っ……! 二人きりでなにを!」
背後から、ゼリヤの俺を止める声が聞こえてきたが、それを一蹴した。
足早に兄上の部屋を目指す。
一度だけ、訪れたことがある兄上の屋敷。
この屋敷のことを鮮明に覚えているのは、いまだに忘れられない記憶があるからだ。
『兄上は王にならないのですか?』
俺が王になる前に、どうしても兄上の本心を知りたくなり、この屋敷まで来た。
兄上の返事は『俺は王にはなれない』だった。
『ならない』ではなく、『なれない』。
父そっくりの黒髪と琥珀色の瞳を持つ俺と兄上。
兄上がグランツエルデ王家の血を引いているのは間違いない。
――兄上は優秀だ。だが、まさか兄上が俺の妻を気に入り、屋敷へ連れ去るとは……
屋敷に到着し、俺の顔を見た門番は驚いていた。
「俺の顔がわかるなら、どけ!」
「な、なぜ、陛下が?」
「門番ごときが、王である俺に直接口をきくな!」
兄上はどうか知らないが、俺は身分をわきまえない人間は嫌いだ。
門番はにらまれ、怯えた様子で門を開けた。
「陛下!?」
「えっ? 陛下がこちらへ? おひとりで?」
扉の先に、兄上の配下が大勢いるのを確認し、町の噂は本当だとわかった。
どうやら、兄上は屋敷にいるらしい。
「俺の妻がいるだろう?」
「……レフィカ様のことでしょうか?」
赤い髪をした異民族の女が前に出る。
兄上に母子で救われ、それ以来、兄上に絶対の忠誠を誓っているゼリヤという女だ。
身のこなしが軽く、武器の扱いがうまいと聞いている。
「レフィカ様はジグルズ様とご歓談中でございます」
レフィカと兄上以外、その場に誰もいないということだ。
――まさか、浮気か!?
「陛下! お待ちくださいませ!」
「やましいことがないなら、俺を止めるな!」
――わからない。兄上が王にふさわしくないというのなら、誰がふさわしいというのだろうか。
勢いよく扉をバンッと開けた。
扉の向こうに兄上とレフィカが、二人きりでいるとわかっていた!
「兄上っ……! 二人きりでなにを!」
背後から、ゼリヤの俺を止める声が聞こえてきたが、それを一蹴した。
足早に兄上の部屋を目指す。
一度だけ、訪れたことがある兄上の屋敷。
この屋敷のことを鮮明に覚えているのは、いまだに忘れられない記憶があるからだ。
『兄上は王にならないのですか?』
俺が王になる前に、どうしても兄上の本心を知りたくなり、この屋敷まで来た。
兄上の返事は『俺は王にはなれない』だった。
『ならない』ではなく、『なれない』。
父そっくりの黒髪と琥珀色の瞳を持つ俺と兄上。
兄上がグランツエルデ王家の血を引いているのは間違いない。