怖いはずの彼は、今日も私にだけ甘い♡
「ケンカ?」 「してないよ」 「じゃあ何」 「……なんでもない」

なんでもないはずがない。 でも、口にしたら泣いてしまいそうだった。

次の日も、その次の日も、わたしは少しだけ神崎くんを避けた。

朝もぎりぎりに教室へ入る。 昼休みは美優と別の場所で食べる。 放課後は先生に用事を頼まれたふりをして、時間をずらして帰る。

最低だと思う。

ちゃんと聞けばいいだけなのに。 あの先輩は誰だったのか。 どういう関係なのか。 不安だって、素直に言えばいいだけなのに。

でも、もしわたしの知らない大事な過去があったらと思うと、こわかった。

避けられていることに、神崎くんが気づかないはずがなかった。

三日目の放課後。

教室に残っていたわたしが立ち上がった瞬間、腕をつかまれた。

「いい加減にしろよ」
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