怖いはずの彼は、今日も私にだけ甘い♡
それでも、不安になってしまった。

わたしの知らない神崎くんがいる。 わたしより前から知っている人がいる。 その事実が、どうしようもなく怖かった。

その日の帰り、神崎くんはいつも通り教室まで迎えに来た。

「帰るぞ」

低い声。 いつもと同じ。

でも、わたしはその横顔を見られなかった。

「ごめん。今日、美優と帰る約束してて」 とっさに嘘をつく。

神崎くんが黙る。

「……ふーん」 「ほんとに、ごめんね」 「別に」

それだけ言って、彼は背を向けた。

怒ったのかもしれない。 でも、引き止めてくれなかったことが少しだけ寂しくて、そんな自分がもっと嫌になる。

そのあと美優に会って、事情を聞かれたとき、わたしは曖昧に笑うことしかできなかった。
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