怖いはずの彼は、今日も私にだけ甘い♡
低く返されて、胸がどきどきする。

静かな部屋。 カーテンのすき間から入る午後のやわらかい光。 その中で神崎くんだけが、くっきり近い。

「神崎くん」 「何」 「いてくれてうれしい」 そう言うと、彼の目が少しだけ揺れた。

「……そんなこと言うな」 「どうして」 「帰れなくなる」 「帰らなくていいのに」 熱のせいで、いつもなら言えないことまでこぼれてしまう。

神崎くんは片手で顔を覆った。

「まじで無理」 「え」 「今日のおまえ、破壊力やばい」 「そんなことないよ」 「ある」

そのあと、神崎くんは少しかがんだ。 わたしの頬に指先が触れる。

「キスしていい?」 いつもより低くて、やさしい声。

胸がどくんと大きく鳴る。

「……うん」 小さく答えたら、神崎くんはすごく大事なものに触れるみたいに、そっと頬にキスを落とした。

ちゅ、と軽い感触。

それだけなのに、全身が熱くなる。

「……おでこも熱い」 そう言って、今度は額にキス。

やさしくて、あたたかくて、泣きたくなるくらい甘い。

「神崎くん」 「ん」 「近い」 「近づきたいから」 「そんな正直に言うの」 「今さら隠しても仕方ねぇだろ」

また頬にひとつ。 今度は反対側にも。

まるで熱を測るかわりみたいに、ひとつひとつやさしく触れてくる。

「……いっぱい」 わたしが小さくつぶやくと、神崎くんは少しだけ困ったように笑った。

「止めたほうがいい?」 そう聞かれて、わたしは首を横に振る。

止めてほしくなかった。 むしろ、もっとほしいと思ってしまう自分がいた。

「じゃあ、もう少し」 低い声のあと、今度は鼻先が軽く触れる。 くすぐったくて、でもうれしい。

そして最後に、唇の端へほんの短いキス。

「っ……」 びっくりして目を開けると、神崎くんがすぐ近くでわたしを見ていた。

「無理させたくねぇから、これ以上は我慢」 かすれた声が甘い。

「今のだけで十分だよ……」 「ほんとか?」 「心臓がもたない」 「俺も同じ」

そう言って、神崎くんはベッドのふちに額を預けるみたいに少しうつむいた。

いつも余裕がありそうに見えるのに、こういうときだけ少し苦しそうなのがずるい。
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