偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
第一章 はじまりの日
彼の指が、まるでそこが自分の居場所だとでもいうように私の髪を撫で、そのまま肩を抱き寄せた。そして、今度は腰へとその手が回ってくる。
昔はそれも当たり前のこととして受け入れていたし、恋人同士とはそういうものなのだと思っていた。たとえ自分の身体であっても彼になら好きなように触れられて当然なのだと……。
だって私は、彼の彼女だったのだから。
だけど――もう違う。
理玖はもう私の彼氏ではないし、私は彼のものでもない。
腰に回された手を掴んで振りほどくと、理玖は不満そうに眉を寄せた。
「触らないで。何度も言ってるけど、私たちはもう別れたんだから、こういうことをされるのは嫌なの」
「なんだよ、急に。付き合ってたときは普通だっただろ? 今さら触るなとか、そんな他人みたいなこと言うなよ」
「今は付き合ってないんだから他人でしょ。付き合ってたときと同じにされても困る」
「だから、やり直そうって言ってるんだろ。悠里だって今は誰とも付き合ってないんだし、だったら俺と戻ればいいじゃん」
「誰とも付き合ってないからあなたと付き合う、なんて話にはならないでしょ」
「いいじゃん、別に。新しい男がいるわけでもないんだから」
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