偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!

 もちろん直接会って話した覚えはない。
 でも、この顔を私は知っている。

 どこだっただろう。仕事? ホテル?
 ――社内資料? それだ!

 その中で、ふとひとつの顔と肩書きが浮かび上がってきた。
 瞬間、血の気が引いた。

「……うそ」

 思わず声が漏れる。
 いや。違う。きっと似ているだけだ。

 名字もちがう。だから、そんなわけがない。

 でも、もし私の記憶が正しいのなら……今、目の前のベッドに座っている男性は。

 高遠ホールディングスの代表取締役社長・高遠岳――その人のはずだ。
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