偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
元彼である相沢理玖は、大手広告代理店・博洋堂に勤める営業マンで、もともとは仕事を通じて知り合った相手だった。
最初は取引先のひとりとしか認識していなかったのだけれど、その後、友人に誘われて参加した食事会で偶然再会。
そこでプライベートの連絡先を聞かれたことをきっかけに二人で会うようになり、何度目かのデートで理玖から告白されて交際が始まった。
まあ、どこにでも転がっていそうな話だ。
当時二十五歳だった私にとって、広告代理店でさまざまな企業を相手に大きな仕事をしている理玖は一つ上とは思えないほど大人に見えた。
実際に仕事の話をする彼は自信に満ちていて格好よく、そんな人から好きだと言われたことが嬉しくなかったと言えば嘘になる。
けれど、いざ彼氏と彼女という関係になってみると、仕事をしているときには見えなかった理玖の一面に、私は少しずつ引っかかりを覚えるようになった。