偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!

「ただ、最近は父が俺に継がせたいっていう気持ちをかなり強くしていてね。だから余計に、お見合いもしつこく勧められてたんだよ。あの人は昔から、一度自分の中でこうだと決めると、人の事情なんてあまり気にせず押しつけてくるところがあるから」
「それで、お見合いしたくなかったんですか? 会社を継ぐことまで勝手に決められそうだから」

「まあ、それもあるけどね。そもそも、俺には見合いする理由がなかったし」

 最後の言葉だけ、少し曖昧だった。
 私はそのまま聞き流しかけたけれど、ふと胸の中に小さな引っかかりを覚えた。

 今日、慧さんは私に『結婚を前提に本当の恋人にならないか』と言った。
 そして、そのほんの少しあとには、お父さまの前で私を結婚を前提に付き合っている相手として紹介した。

 結果として、あれほど勧められていたお見合いを断るには、これ以上ない理由ができたことになる。

 まさかとは思う。
 慧さんがそんな理由だけでキスをしたり、恋人になろうと言ったりする人ではないと信じたい。

 それでも、もし少しくらいはそこに事情が含まれていたのだとしたら。
 そう思うと聞かずにはいられなかった。
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