偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
「あの……ひとつだけ聞いてもいいですか?」
「なに?」
「もしかして今日、私に本当の恋人にならないかって言ってくれたのって、お見合いを断るためでもあったんですか?」
「え?」
慧さんが、本気で予想していなかったような顔でこちらを見た。
その反応だけで少しほっとしたものの、私は聞かなかったことにはできなかった。
「もちろん、それならそれで助けたいとは思います。慧さんには今まで散々助けてもらいましたし。でも……もし、今日のことがお見合いを断るためだったのなら、最初からそう言ってほしかったというか……やっぱり、それはちょっとだけがっかりするので」
最後のほうは、自分でも情けないほど声が小さくなった。
今さら何を言っているのだろう。
ついさっきまで『私が息子さんを必ず幸せにします』と勢いよく宣言しておいて、今度はお見合いを断る道具だったのではないかと落ち込んでいるなんて、我ながら忙しい。
けれど慧さんは笑わなかった。
少し走ったところでウインカーを出し、安全に停められる場所へ車を寄せると、そのまま私のほうへ身体を向けた。