偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
その姿が見えなくなったところでようやく私は大きく息を吐く。
そこでやっと自分が直属の上司の腕を寄せたままだったことに気づき、慌てて絡めていた腕を離すと勢いよく頭を下げた。
「変なことに巻き込んでしまい申し訳ありませんでした!」
「気にするな。むしろ頼られてよかったよ」
「でも……部長にとっては仕事でも顔を合わすこともある相手なのに……」
「気にするなと言っただろ。どちらかと言えば、よかったんだよ。大きな問題になるまで、片瀬は隠しそうだしな。こういうことは男が出て行った方がいいこともあるんだ」
「……すみません」
「だから謝るなって」
久世部長は困ったように眉を下げながらも責める様子などまるでなく、本心からホッとしているように見えた。
その表情を見ていると、こんなことに巻き込んでしまった申し訳なさと助けてもらった安堵が入り交じる。