偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
それから私たちは、何かあったときにすぐ連絡を取れるようにと私用のメッセージアプリのIDを交換することになった。
これまでは仕事上の連絡しかしたことがなかったので社用スマートフォンのメールで不便を感じることもなかったけれど、さすがに偽の婚約者についての私的なやり取りまで会社の端末でするわけにはいかない。
「これで、何かあったときはこっちに連絡してくれればいいから」
「はい。ありがとうございます」
IDを交換し終えると、久世部長は「今日は送っていくよ。このままひとりで帰らせるのも心配だしな」と言ってくれ、その申し出に甘えて家の前まで送ってもらうことになった。
そこで初めて部長が車で通勤していることを知る。
都心のど真ん中にある会社へ毎日電車ではなく車で通っているなんて考えたこともなかった私は、助手席に座りながら意外に思った。