偽りの婚約者さまは、この関係を終わらせる気がない!
会議が終わっても、私はしばらく自分の席へ戻れずにいた。
L'ÉCRINの五十周年企画。
しかも、プロジェクトリーダー。
これまでだって担当案件を任されたことは何度もあるし、自分なりに責任を持って仕事をしてきたつもりではある。それでも、複数のメンバーをまとめながら会社として大きな企画を動かすなんて、これまで背負ったことのない重責だった。
それに、どうして結城課長まであんなに簡単に賛成したのだろう。
順当に考えれば、経験も役職も上の結城課長がリーダーになるべきなのに。
そんなことを考えながら資料をまとめていると、後ろから軽く肩を叩かれた。
「片瀬、そう緊張するな。いい経験になるよ」
「結城課長……」
振り返ると、結城課長は私の不安など全部わかっているというように笑っていた。
「でも、順当に考えたら、私より課長のほうが適任だと思うんですけど。経験だって全然違いますし、私がリーダーで課長が補佐って、やっぱり逆じゃないですか?」
「まあ、これまでならそうだったかもしれないな。上の人間が責任も職務も全部引き受けて、その下に若手や中堅をつける。それが一番失敗は少ないし、会社としても楽だから」
結城課長はそう言って、すでに人が減り始めた会議室をちらりと見渡した。