君の才能ごと、独り占め
「なんで」

「聴きたいから」

「断る」

即答だった。

「ええ」

「人前では弾かない」

「私ひとりじゃん」

「人」

「けち」

「橘にだけは聴かせたくない」

思わず息をのむ。

それは拒絶の言葉なのに、声の響きがどこか違っていた。

「どうして」

「……おまえにだけは、下手なの知られたくない」

私は目を丸くして、次の瞬間、どうしようもなく胸が熱くなった。
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