君の才能ごと、独り占め
榊くんにも、そんな感情があるんだ。

完璧に見える人が、私相手にはそんなふうに思ってくれる。

「全然下手じゃないのに」

「慰めいらない」

「ほんとだよ」

「それでも嫌だ」

「そっか」

私は小さく笑って頷く。

そのとき、廊下から複数の足音が聞こえてきた。生徒会のメンバーらしい声も混じっている。

榊くんはすぐに立ち上がった。

「ここ、閉めるから」

「うん。ありがとう」

「何が」

「いろいろ」

彼は少しだけ私を見たあと、ドアへ向かう。

その途中でふいに立ち止まり、振り返った。

「橘」

「なに?」

「今日のこと、誰にも言うな」

「もちろん」

「あと」

「あと?」

「人前で無理して笑うくらいなら、俺の前でだけ素でいればいい」

心臓が止まったかと思った。

さらりと言うには、あまりにも反則な言葉だった。
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