君の才能ごと、独り占め
才能を見せるための舞台に戻るみたいで怖い。
でも、今の私なら少し違う弾き方ができるかもしれない。

考え込んだまま特別棟の音楽室へ向かうと、扉は少しだけ開いていた。
中には誰もいないと思ったのに、静かな音が流れてくる。

ピアノ。

そっとのぞくと、そこには恒一くんがいた。

あの日と同じ夕暮れ。
同じグランドピアノ。
でも今度は、彼も私に気づいていて、隠す様子はなかった。

曲が終わるまで待っていると、彼は鍵盤に手を置いたまま言った。

「入って」

私はゆっくり中へ入る。

「また聴いちゃった」

「今日はいい」

「どうして」

「今日は聴かせたかった」

心臓がきゅっと鳴る。
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