君の才能ごと、独り占め
「私に?」

「うん」

彼は鍵盤から手を離し、静かに私を見た。

「迷ってる顔してたから」

全部お見通しだ。

私はピアノのそばまで歩いていき、蓋の艶にぼんやり映る自分を見つめた。

「先生に、講堂でソロ頼まれた」

「聞いてた」

「だよね」

「迷ってる」

「うん」

音楽室の空気は静かで、言葉だけがきれいに響く。

「怖いの」

そう口にしたら、少しだけ楽になった。

「また期待されるのが?」

「それもある。でもたぶん、一番怖いのは」

私は指先でピアノの縁をなぞる。

「弾いても、また楽しいって思えなかったらどうしようってこと」

恒一くんはすぐには答えなかった。
代わりに、ピアノの椅子を少し横へずらす。
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