君の才能ごと、独り占め
「俺に聴かせるつもりで弾いて」

その一言で、ふっと呼吸が楽になった。

大勢のためじゃなくていい。
学校中の期待に応えるためじゃなくていい。
恒一くんに聴かせるつもりで。

そう思ったら、不思議なくらい心が静かになる。

「うん」

「終わったら最初に来い」

「約束したもんね」

「絶対」

「絶対」

恒一くんは満足そうに目を細めた。
それから周りに見えない角度で、そっと私の髪に触れる。

「今日の星音、ほんとに綺麗」

反則だと思う。

こんな直前にそんなことを言われたら、緊張よりも別の意味で心臓がもたなくなる。

「……恒一くん」

「なに」

「今それ言う?」

「緊張ほぐし」

「ほぐれ方がおかしいよ」

けれど実際には、少し笑えていた。

そんな私を見て、彼もわずかに口元をやわらげる。
それだけで、舞台に立てる気がした。
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