君の才能ごと、独り占め
やがて係の生徒に名前を呼ばれる。

「橘さん、スタンバイお願いします」

「……はい」

立ち上がると、恒一くんも一緒に立った。

「行ってくる」

「ん」

彼は短く頷いてから、低い声で言った。

「大丈夫。星音はちゃんと、自分の音を持ってる」

胸が熱くなる。

私は最後にひとつ息を吸って、舞台袖へ向かった。

講堂の明かりは落ちていて、客席は暗い海みたいだった。
それでも、ざわめきの大きさで人の多さがわかる。

司会の紹介が流れる。

「続いては二年三組、橘星音さんによるピアノ演奏です」

その名前に、客席がどよめいた。

やっぱり知られている。
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