過去の傷も全部、君の熱で上書きして。
あの温泉旅館での甘く濃密な週末から、数週間が経っていた。
旅行を経て、二人の関係はより深く、揺るぎないものへと変化していた。
結衣の薬指には、休日や二人きりの部屋限定で身につける、廉から贈られた華奢なリングが輝いている。
オフィスでの二人は相変わらず''頼れる先輩と優秀な後輩''の仮面を被っていたが、一度社外へ出れば、廉の溺愛ぶりは以前にも増して隠しきれないものになっていた。
「結衣ちゃん、今夜の夕飯は何が食べたいですか?」
「もう、廉くん。会社からまだ一駅しか離れてないんだから、名前で呼ぶのは危ないってば・・・。」
会社の最寄り駅から一駅離れたカフェの角で待ち合わせる、毎朝毎晩の秘密のデートコース。
すれ違う人混みに紛れながら、廉は結衣の手をすっと取り、自分のコートのポケットの中へと滑り込ませた。