過去の傷も全部、君の熱で上書きして。
路地裏の壁に背中を預けたまま、俺は空を見上げて何度も深く息を吐き出した。
「・・・はぁぁぁ・・・っ。」
腕の中に残る、柔らかで温かな感触。
『結衣さんがいいんです』
と言った時、彼女が涙目のまま俺の背中に回してくれた、小さくて愛おしい指先の感覚。
それが頭から離れなくて、心臓が耳元で鳴り響いているみたいにうるさかった。
(・・・危なかった。マジで嬉しすぎて、理性が吹き飛ぶところだった・・・・・。)
思い出すだけで、視界が熱くなる。
歓迎会の帰り道。
千鳥足で歩く結衣さんの姿を見つけた時、俺以外の男もいる前で無防備に酔っ払っている彼女に猛烈な嫉妬が湧いた。
だけど、二人きりになった夜道で彼女が吐き出したのは、過去の傷に怯える悲痛な叫びだった。