過去の傷も全部、君の熱で上書きして。
カチャリ、と玄関のドアが開く音がした。
幻聴かと思った。
だが、寝室のドアがそっと開き、そこには息を切らせて心配そうにこちらを見る結衣先輩の姿があった。
「・・・廉くん? 入るね。」
その声を聞いた瞬間、俺の理性の箍(たが)が呆気なく外れた。
熱のせいか、それとも弱っていたせいか。
いつもなら''カッコいい男''でいようと必死に保っている計算や余裕が、全部どこかに吹き飛んでしまった。
おでこに触れる結衣先輩の手が冷たくて、気持ちよくて、愛おしくて。
立ち上がろうとする裾を掴んで
「帰らないで。」
とおねだりしたのも、素で''結衣ちゃん''と呼んでしまったのも、全部本能だった。