過去の傷も全部、君の熱で上書きして。

あの日、熱にうなされた廉を看病し、
「風邪が治ったらね。」
とお預けをしてから数日。​

全快した廉から「あの日のお返し」として限界ギリギリまで甘く攻め立てられてからというもの、藤崎結衣の日常は劇的な変化を遂げていた。


​朝、午前8時15分。

社最寄り駅の一つ手前の駅前にある、小さなカフェの角。

結衣が立つと同時に、人混みを縫うようにして長身の影が近づいてきた。​


「おはようございます、結衣さん。」


​パリッとしたスーツを着こなした廉が、柔らかな笑みを浮かべて隣に並ぶ。

会社までの徒歩15分ほどの道。

これが、交際を始めてから二人が作った
''毎朝の秘密のルール''だった。​


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