過去の傷も全部、君の熱で上書きして。
「おはよう、廉くん。・・・あのね、言おうと思ってたんだけど、やっぱりこの道、うちの会社の社員も通るかもしれないし、少し離れて歩いた方が・・・。」
「嫌です。これ以上離れたら、ただの他人じゃないですか。」
結衣の心配をあっさりと切り捨てると、廉はスーツの袖口からすっと手を伸ばし、歩きながら結衣の指先に自身の指を滑り込ませた。
恋人繋ぎの形で、ギュッと優しく握り締められる。
「っ・・・・! 廉くん、誰かに見られたら・・・・。」
「誰も見てませんよ。それに、会社に着いたら嫌でも''先輩と後輩''のフリをしなきゃいけないんですから。このくらい我慢してください。」
そう言って、廉は繋いだ手を自分のコートのポケットへとすっぽり放り込んだ。
ポケットの中で重なる手のひら。
伝わってくる廉の高い体温と、指を絡め直される感触に、結衣の顔は一瞬で熱くなった。