世界の歌姫今日も元気にスパイ活動中!?
繁華街の裏路地。

私たちは、龍さんから渡された写真をもう一度確認していた。

「取引場所は?」

HITOHAが小声で尋ねる。

「この先のキャバクラ」

IYUが答える。

「情報屋は?」

「もう中にいるはず」

CHESSがスマホを覗き込む。

「護衛の人は?」

LALAが聞いた。

私は写真を見つめる。

「……この人」

写真に写っている大柄な男を指差す。

「さっき龍さんが言ってた『バケモン』?」

「たぶんね」

「イケメンだといいな」

CHESSが顔を緩めた。

「CHESS、ふざけるなら帰る?」

「帰らない!もうふざけないから!」

「即答」

「だって焼肉が待ってるもん!」

「任務より焼肉なの?」

「ご飯は大事だよ!」

「……ふふ」

LALAが笑った。

「いつも通りだね」

「そういうこと」

HITOHAが頷く。

「じゃあ、行こう」

私たちは裏口へ向かった。

「こんばんは〜!」

扉を開けた瞬間、CHESSが笑顔で店員に声をかけた。

「五人なんですけど、入れますか?」

「申し訳ありません、今夜は貸し切りで――」

「あそうなんですね…」

けれど、そのまま店員の視線をちらりと追った。

店員の手元。

そこには、無線機

店員は忙しいのかすぐに奥へ戻っていった

「……ねえ」

CHESSが小さく呟く。

CHESSが奥の席を指差した。

「……なるほど」

HITOHAが小さく頷く。

「警備が増えてる」

HITOHAが私たちに教えてくれた

私は店内を見回した。

「情報屋は中にいる」

「じゃあ、どうする?」

IYUが聞く。

私は少し考える。

「私が入る」

「どうやって?」

「簡単」

私は近くにいたスタッフの服装を見た。

「私、KARAKUだよ?」

「今はKARAKUじゃなくてKARAだけどね」

CHESSが笑う。

「……分かってる」

私は帽子を被り、髪をまとめた。

そしてスタッフに紛れて、裏口から中へ入った。

店内は薄暗かった。

私はトレーを持ったまま歩く。

「失礼します」

綺麗すぎない笑顔で接客

誰にも怪しまれない。

ステージの上で何万人もの視線を浴びるより、こっちのほうがずっと楽だった。

「……いた」

奥の席。

写真の男が座っている。

その隣には、例の大男。

「バケモン……」

私は小さく呟いた。

その瞬間。

男と目が合った。

「……!」

まずい。

私は何食わぬ顔で頭を下げた。

「失礼しました」

そのまま通り過ぎる。

正常心を保つ

背中に視線を感じる。

けれど――

「KARA、聞こえる?」

耳元からHITOHAの声がした。

「聞こえてる」

「情報屋、確認できた?」

「うん。奥の席」

「了解」

HITOHAの声が少し低くなる。

「じゃあ、次は私たちの番」

「すみませーん!」

CHESSが店内に入ってきた。

「迷っちゃった〜!」

「お客様、ここは――」

「ねえねえ、このお店って有名なんですか?」

CHESSは店員に話しかけながら、周囲を見回す。

「最近この辺詳しくなくて!」

「……」

「え、なにその顔!」

CHESSが笑う。

「怖いって!」

店員が困ったように視線を逸らす。

その隙に、CHESSは小さく指を動かした。

『警備、多い』

HITOHAに合図を送る。

「了解」

通信が返ってきた。

その頃。

建物の外では、IYUが壁を見上げていた。

「ここから入れる?」

「普通に入るよりは早い」

HITOHAが答える。

「分かった」

IYUは軽く助走をつける。

一気に壁際へ駆け寄り、足場を使って上へ。

「……相変わらずすごい」

CHESSが呟く。

数秒後。

IYUから通信が入った。

「二階、異常なし」

「了解」

HITOHAが周囲を確認する。

「じゃあ、最後は――」

「私?」

LALAが笑った。

「任せて」

店内。

大男が突然立ち上がった。

「……誰だ」

私のほうを見ている。

「まずい」

私はトレーを置く。

男がこちらへ歩いてくる。

「おい」

「……」

私は振り返った。

その瞬間。

「KARAKU!」

CHESSの声が響いた。

「こっちは任せて!」

CHESSが男の注意を引く。

「ねえ、お兄さん!」

「……なんだ」

「さっきから怖い顔してるけど、そんなに怖い人なの?」

「……は?」

男がCHESSを見る。

その隙に、私は情報屋のいる席へ向かった。

「失礼します」

「な――」

「ちょっとだけ、お借りします」

私は男の手元にあったケースを取り上げる。

それはそれは華麗に、美しく。

「水龍の情報、返してもらうね」

奪われたことさえ忘れすような動きで

「っそれは――」

男が立ち上がる。

「待て!」

その前に。

ドンッ!

LALAが立ちはだかった。

「ここから先には行かせない」

「……!」

大男がLALAを見る。

「女一人で俺を止める気か?」

「一人じゃないよ」

LALAが笑う。

「私たち、五人だから」

その瞬間。

「上、クリア!」

IYUが二階から降りてくる。

「出口も大丈夫!」

HITOHAが続く。

「情報屋は確保。あとは撤退するだけ」

「よし!」

CHESSが笑う。

「じゃ、帰ろっか!」

「待て!」

大男が動く。

「LALA!」

「分かってる!」

LALAが前に出る。

短い攻防。

そして――

「はい、終わり」

LALAが相手の動きを止めた。

「……強」

CHESSが呟く。

「LALA、やっぱすごいね」

「ありがとう」

LALAが笑う。

「じゃあ、帰ろう」

私はケースを抱えた。

「任務完了」

外へ出ると、夜風が気持ちよかった。

「つかれた〜!」

CHESSが伸びをする。

「みんな夕飯どうする?」

「刺身」

「まだ言ってる!」

「私は焼肉」

「IYUまで!」

「私はラーメン」

「HITOHAも!?」

「しゃぶしゃぶ」

LALAが答える。

「……」

CHESSが固まった。

「だからバラバラすぎるって!さっきとなんも変わってないじゃん!?」

「じゃあCHESSは?」

「……全部!」

「欲張り」

私たちは笑った。

そのとき。

「お前ら」

後ろから声がした。

振り返る。

朱夏さんだった。

「……お疲れ」

「朱夏さん!」

CHESSが駆け寄る。

「今回どうでした?」

「まあまあ」

朱夏さんは私たちを見回した。

「相変わらず騒がしいな、お前ら」

「褒めてます?」

「褒めてない」

「ひど!」

私は笑った。

任務は終わった。

今日もいつも通り。

アイドルとしてステージに立って。

スパイとして任務をこなして。

そして――

五人でくだらないことで笑う。

それが、私たちLIMITの日常だった。
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