死に損ないの巫女と十年の時を刻む春楡

二つの記憶


(生まれ変わっても春に咲く花だなんて、思わなかった)

 竹箒の先で薄桃色の花びらが舞う。春の神社の風景は、空を遮る電線がない以外、令和の日本とほとんど変わらない。

「はー」
 深呼吸して、朝の境内の清々しい空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
 
 前世の記憶を思い出したのは二、三年前のこと。
 前世の私は、人よりちょっぴりヘビーな運命を背負った普通の女子高生。名前は春菜(はるな)といった。
 事故の加害者を家族に持つがゆえに、周囲に疎まれ、肩身の狭い思いをしていた春菜。それでも、大好きなおばあちゃんの、「悪意は返しちゃだめ」という言葉をお守りに、腐らず生きてきたんだ。
 なのに最期はホントにあっけなくって、不慮の事故で一瞬。その時はもう、神様を恨んでしまったけれど——

 生まれ変わってみたら、そこには祝福が満ちていた。
 前言撤回。神様、粋なことするじゃないの。

 今世の私、なずなは、「癒しの巫女」として、皆に敬われ、愛されている。
 この恵まれた人生、穏やかに、平和に生き切ろう!
 そんな風に心の底から思っていたのだ。
 青い瞳の異邦人——ハルニレに会うまでは。
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