君の隠し事
『 クラスも違うし、最近話せてなかったし。もし県外に行ったら、今よりもっと遠くなる。だから、言えなかった。』

「でも、怪我をした今なら言えると思ったの?」

『 違う』

彼は首を振った。

『 怪我をして、全部なくなった気がしたんだ。サッカーも、推薦も、お前との未来も』

「未来って……」

『 俺は、お前と一緒にいたかった』

その言葉に、涙がこぼれそうになった。

「県外に行っても?」

『行きたくなかったわけじゃない。でも、お前と離れるのが嫌だった』

「じゃあ、どうして一人で決めようとするの?」

彼は黙った。

「怪我のことも、推薦のことも、私に何も言わないで。私が何も知らないまま、勝手に離れていこうとするの?」

『……ごめん』

「謝ってほしいんじゃない」

私は彼の隣で、拳を握った。

「一緒に考えたいの」

彼が顔を上げる。

「サッカーを続けるかどうかも、県外に行くかどうかも、私が決めることじゃない。でも、あなたが一人で苦しむ必要はないよ」

『 でも、俺は何もできないかもしれない』

「今はできなくてもいい」

『……本当に?』

「うん。私だって、いつも強いわけじゃないし」

彼はしばらく私を見つめていた。

やがて、目元を手で覆う。

『……怖かった』

初めて聞く、彼の弱い声だった。

『サッカーができなくなるのも、お前に嫌われるのも、全部怖かった』

「嫌いにならないよ」

『約束できる?』

「できる」

『 俺が、もうサッカー選手みたいに走れなくても?』

「それでも」

『県外に行けなくなっても?』

「それでも」

彼はゆっくりと手を下ろした。

目が赤くなっていた。

『 じゃあ、俺も約束する』

「何を?」

『 もう、隠さない』

その言葉を聞いて、私は小さく笑った。

「絶対?」

『 絶対』

彼は少し迷ってから、私の手に触れた。
< 12 / 12 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

小さなひかり
くるみ/著

総文字数/1,389

青春・友情10ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
小さなひかり~咲かせてみたい~

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop