君の隠し事
風が吹き、木の葉が静かに揺れる。

「手術、成功したって聞いた」

『うん。先生はそう言ってた』

「じゃあ、またサッカーできるんだよね?」

彼はすぐには答えなかった。

『リハビリ次第』

「どれくらいかかるの?」

『半年以上』

「半年……」

『それだけじゃない』

彼は膝の上で手を握りしめた。

『復帰できるかどうかも、まだ分からない』

私は黙って彼を見た。

「でも、頑張れば戻れるかもしれないんでしょ?」

『そうかもしれない』

「じゃあ、頑張ろうよ」

 彼は苦しそうに笑った。

『簡単に言うなよ』

その声に、胸が痛んだ。

「ごめん」

『違う。お前が悪いんじゃない』

彼は俯いた。

『俺だって、戻りたい。でも、怖いんだ。リハビリしても戻れなかったら。みんなが先に進んでいくのに、俺だけ置いていかれたら』

「……うん」

『それに、もうひとつある』

彼はポケットから、折りたたまれた紙を取り出した。

病院の封筒とは違う、学校の書類のようだった。

「これ、何?」

『推薦の話』

「推薦?」

『県外の強豪校から、声をかけてもらってた』

私は息を呑んだ。

「でも、怪我をしたから……」

『まだ正式に断られたわけじゃない。でも、今の状態じゃ難しいと思う』

彼は紙を見つめた。

『もし怪我をしてなかったら、来年から県外に行ってたかもしれない』

胸の奥が、ずきりと痛んだ。

「……それ、いつから知ってたの?」

『怪我をする前』

「どうして言ってくれなかったの?」

『言ったら、離れることになるかもしれないって思ったから』

彼は私を見た。
< 11 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop