イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
しばらく無言だった。
でも、その沈黙は苦しくない。
湊といると、話さない時間までやさしい。

「白石はさ」

「うん」

「この先、なりたいものある?」

突然の質問に、紬は少し考えた。

「まだ、はっきりはない。でも、人の気持ちに寄り添える仕事がいいなって思う」

「似合う」

「そうかな」

「うん。白石、ちゃんと痛いこと知ってるから」

その言葉に、紬は息をのんだ。

痛いことを知っている。
それはたぶん、やさしい褒め言葉なのに、少しだけ泣きたくなる。
失ったものまで見透かされた気がしたからだ。

「朝比奈くんは」

同じように問い返すと、湊は少しだけ黙った。

「前はあった」

前は。
その言葉がひっかかった。

「今はないの」

「なくした、って言ったほうが近いかも」

雨が少し強くなる。
ベンチの前に落ちるしずくを見つめながら、湊はそれ以上続けなかった。

紬も、無理には聞けなかった。

聞いてしまえば、この静かな時間が壊れてしまう気がした。
まだ踏み込んではいけない場所が、彼の中にはある。
そうわかってしまったからだ。

それでも、少しだけでも支えになりたかった。

「なくしたものって」
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