イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
放課後、紬は少し迷ってから駅へ向かわず、商店街のほうへ歩いた。

湊が前に、弟の好きなおかずは卵焼きだと言っていたのを思い出したからだ。
何かできるわけではない。
でも、せめてゼリーくらいなら差し入れても重くないかもしれない。
そんな理由を自分に言い聞かせながら、紬は小さな袋を手に店を出た。

けれど、家を知らないことに気づいたのは、そのあとだった。

立ち止まって苦笑しかけた、そのとき。

「白石さん?」

聞き覚えのない幼い声に振り向くと、ランドセルを背負った男の子が立っていた。
大きな目。
少しだけつり気味のまつげ。
整った顔立ちは、驚くほど湊に似ていた。

「え……」

「やっぱり。みなとの学校の人だよね」

紬は目を瞬かせた。

「もしかして……弟くん?」

「うん。朝比奈澪」

ぺこりと頭を下げる姿までどこか大人びていて、紬は思わず笑みをこぼした。
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