イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
屋上へ続く階段の踊り場は、昼休みになるとほとんど人が来ない。
窓から差し込む初夏の光が白くて、風だけが静かに通り抜ける。

並んで座ると、少しだけ距離が近い。
教室よりずっと近い。
紬は自分のお弁当を膝の上に置きながら、隣の湊をそっと見た。

彼は紺色のお弁当箱のふたを、ゆっくり開けた。
その手が、ほんの少しだけ止まる。

「……すごい」

「全然すごくないよ」

「いや、すごい」

卵焼きを見つめるその目が、思ったよりやわらかかった。

「卵焼き、弟くん好きって言ってたから」

「覚えてたんだ」

「うん」

「俺の好きなものは」

突然そう言われて、紬は瞬きをする。

「知らない」

「今、覚えて」

少しだけ意地悪な言い方だった。
でも声はやさしい。

「卵焼き」

「同じなの」

「うん」

紬は笑った。
湊も笑った。
そんな小さな一致が、泣きたくなるほどうれしい。
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