イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。
放課後。
紬は昇降口で靴を履き替えていた。
今日は湊と少しでも話せるだろうか。
そう思っていたのに、彼は授業が終わるとすぐにいなくなってしまった。

やっぱり避けられているのかもしれない。
そんな不安が胸の奥に沈む。

「紬」

後ろから悠生が追いついてきた。

「一緒に帰ろう」

「え、でも」

「家の方向、途中まで同じだろ」

たしかにそうだった。
昔住んでいた場所は近かったから、駅までの道も重なる。

断れなくて、紬はうなずいた。

夕方の道を並んで歩く。
悠生は昔話をたくさんした。
小学校の運動会のこと。
秘密基地みたいに使っていた公園のこと。
紬が本を読みながら居眠りしていたこと。

笑える話ばかりなのに、紬はところどころ上の空になってしまう。
頭の片隅にいるのは、ずっと湊だった。

「紬、なんか悩んでる?」

ふいに悠生が聞く。

「え」

「昔からそう。なんか考えてるとき、ちょっとだけ黙る」

その言葉に、紬は少し驚いた。
そういうところまで覚えているのだ。

「別に、悩んでるわけじゃ」

「その言い方の時点で悩んでる」

悠生が笑う。
からかうようでいて、ちゃんとやさしい。

「俺でよければ聞くよ」

そのひと言が、思ったより胸にしみた。
でも同時に、別の苦しさも生まれる。
今このやさしさに寄りかかってしまったら、きっともっとややこしくなる。
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