精霊に愛された少女は、最強魔術師に見つかった

「ソルベシア様は、少し不機嫌③」

「ルカマー王国の王太子にですか?」
「ああ。流石にルカマー王国にお前が滞在することになる場合は伝えておいた方がいい。そうすれば何かあった時に国が盾にぐらいはなれる」
「……ルカマー王国の王太子殿下は信頼できる方なのですか?」


 私は出来る限り精霊のことを誰かに知られたくないと思っていた。もしルカマー王国に知られたら、私は利用されてしまうのではないかと。そう危惧してしまっている。
 ……私が生まれ育ったこの国が精霊を何処までも特別視しており、知られてしまえば放っておかれないだろうとそう分かっているからこそ余計にそう思う。


「ああ。パルフィアの意思を尊重はしてくれるだろう」
「……本当ですか?」



 私はなかなか信じられない。だって精霊を視て、会話を交わせる力というのは特別なものだ。
 この国が精霊を他の国よりは特別視しているとはいえ、他の国にとっても特別なことには変わりない。
 その力を利用しようとしたり、手に入れようとしたり……。


 過去の歴史の中では、そういった争いは数多く起きたらしい。私は自分が精霊と関わりがあるからこそ、過去の事例を書物で読んだりしていた。
 どれだけ素晴らしいとされている人格者だったとしても、圧倒的な力を前にすれば変わってしまうことがある。
 ――私はソルベシア様のことは信頼している。こうして私のことを知っても他に言いふらさないでいてくれる。だからこそ安心して喋れている。
 でもそのルカマー王国の王太子殿下はどうなのだろうか。
 私は王族というと、ハウレワを特別視して、好き勝手させている存在という認識しかない。
 我が国の王族にとっては、精霊を視ることが出来る存在が何処までも特別だった。
 そう、それは他の国にとってもそうなのではないかと思ってしまった。



「そう心配する必要はない。ルカマー王国の王太子は話が通じる男だ。俺のことも自由にさせてくれているしな」
「そうなのですか?」
「ああ。そもそもパルフィアのような存在の意思に反して何かを強要するよりも、良い付き合いをした方がいいと王太子は知っている」
「……無理やり何かを強要はしないと?」
「そうだな。俺も割と好きにやらせてもらっている。国内では俺が優秀な魔術師だから、その力を国のために使うべきみたいな面倒なことを言ってくる連中はいるが、それらもはねのけてくれている。俺はあの男が王太子である限りは、ルカマー王国に魔術師として仕える予定だな」



 ソルベシア様はそう言って楽し気に笑った。


 ああ、やっぱりそういう人たちもいるのか。ソルベシア様にまでそんなことを強要しようとする人が居るなんてすごく命知らずだと思う。
 だってソルベシア様は、凄い人だ。私はソルベシア様の魔法を見たことはない。だけれども素晴らしい魔法の使い手だというのは分かる。



 精霊達だってソルベシア様がそう言う方だからこそ、彼がいると楽しそうにしている。
 私がソルベシア様と話していて楽しいと思えるのは、彼がとても自由な人だからかもしれない。
 私とは正反対の生き方をしている。
 自分のことを隠したり、誰かにやられっぱなしになったりしない。そういうところが凄く眩しい。



「だから俺はもし納得が出来ないことを強要されたらすぐさま、違う国に亡命するだろうな。王太子もそれが分かっている。俺はそういうことを簡単にする人間だって。だから周りが何か言うのを抑えてくれている」


 きっと有言実行で、ソルベシア様は嫌なことがあればすぐに亡命するのだろうな。それこそ大切な人達を全員連れて亡命するのかもしれない。全てを守れるだけの力を彼は持ち合わせている。
 こんなソルベシア様に信頼されているルカマー王国の王太子はとても素晴らしい人なのかもしれない。



「そうなんですね……」
「ああ。だから許可をもらう際は王太子にだけ伝える予定だ。お前が望まないような提案はしてこないはずだ。それにもし……パルフィアのことを利用しようというのならば俺も敵に回すことになるとは伝える」
「なんですか、それ」


 思わずソルベシア様の言葉に笑ってしまった。

 だってそこまでしてもらう必要なんて全くない。私のために国を敵に回すような発言をするなんて信じられなかった。
 だって私とは会ったばかりだ。それに比べてルカマー王国は産まれ育った場所で、大事な人達も多いはずだ。



「そんな冗談も言うんですね、ソルベシア様」
「冗談なわけないだろう? 俺はパルフィアにルカマー王国に来てほしいんだ。だからこそ、お前が嫌な思いをしないようにするのは当然だろう?」
「……いえ、そこまで言ってルカマー王国の王太子の不興を買ったらどうするつもりなんですか?」
「その時はその時だろう?」

 そんな風に軽く言われて、不思議な感覚になる。


 本当にソルベシア様は、私を喜ばせることが上手い。きっと本気なんだろう。
 ……私にただルカマー王国に来てほしいって思っている。それに私とこれからも交流を持ちたいと考えてくれている。
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