精霊に愛された少女は、最強魔術師に見つかった

「ソルベシア様は、少し不機嫌②」

「私の扱いを見て嫌な気持ちになったのですか?」
「そうだが、なぜ、嬉しそうなんだ?」
「ソルベシア様が私のために怒ってくれているのが、嬉しいなって」


 不機嫌になっている人にこんな言葉をかけるべきではないのかもしれない。ただ私は、それだけソルベシア様が私のことを気に掛けてくれているのかと嬉しくなってしまったのだ。
 そんな私を見てソルベシア様は呆れたような視線をこちらに向ける。


「お前は……このままやられっぱなしで一生を終えるつもりか?」
「いえ? 卒業後はこのままとんずらするつもりですよ」

 そういえばソルベシア様に国を出ようとしていることは伝えていなかった。最初に遭遇した時はこんなに会話を交わす仲になるとも思ってもいなかったしなぁ。


「そうなのか。どこへ行く気だ?」
「何も決めてません。ただハウレワ達とも、この国とも関わりのない場所に行きたいなって。国を出れれば常識も変わりますし、それだけで比較的自由にはなれるかなとは思ってますけれど」


 私がそう言ったら、ソルベシア様は少し考え込む仕草をする。


「なら、俺の国に来いよ」
「え」
「ただ暮らすだけならルカマー王国でも問題ないだろう?」



 まさかお誘いを受けるとは思ってもいなかった。あくまでソルベシア様はご予定があってこちらの国に来られているだけでそれが終わればミストラル王国へやってくることもなくなる。
 そうなれば切れる縁だとずっと思っていた。
 ソルベシア様のように素晴らしい魔術師が気まぐれで私に興味を抱いてくれているだけだと思っていたから。
 ――それなのにこの人はその先も、私と仲良くしたいって思ってくれているのだな。


「……それ、ソルベシア様が個人で決めていいものなのですか?」


 嬉しかった。だけれども、そういった言葉を口にしたのは簡単に誘いにのってもいいものか分からなかった。
 そもそも私はこの国を出たらこれまで関わりのあった人達と一切かかわることなく生きていこうと思っていた。


 ――私のことを知らない人たちの場所で、ただ自由に過ごせればとそう思っていた。
 ソルベシア様と関わって生きていく未来なんて考えていなかった。そもそも人と深く関わっていくというのを、私はこれまでしたことがなかった。
 だから想像がつかない。それに私は自分がソルベシア様にずっと興味を抱いてもらえるような特別な存在だとは思っていない。……私、長い間一緒に居てソルベシア様に面白くないと思われてしまうのを恐れているからだろうな。


 そもそも私がソルベシア様の国へ向かうことで、逆に迷惑をかけてしまう恐れはある。
 私は精霊達と仲良くしていることを周りに悟られるような真似はするつもりはない。自分の力のことはばれないようにしていくつもりだ。
 それでも私の力は、生きていればいずれかのタイミングで露見するかもしれない。


 ――その時に、ミストラル王国が何を言ってくるのか分からない。私のことを散々貶めておきながらも、ソルベシア様やルカマー王国へどんな文句を言い始めるかも分からない。
 だから勝手に私を国に誘うのは、幾ら最強の魔術師と名高いソルベシア様でもやらない方がいいというのは私でもわかる。



「それなら許可をとれば大丈夫か?」
「……ソルベシア様にご迷惑が掛からないのならば」

 私がそう言ったら、ソルベシア様は笑った。



「ならパルフィアがこちらの国に来やすいように準備しておこう。ああ、でも別にそれは強制ではないぞ。ただの一つの選択肢だと思ってくれればいい。ルカマー王国へとこないなら来ないでいいし、何かあった時に逃げ込める場所って認識でもいい」
「……そんな、軽く考えていいのです?」
「もちろんだ。まぁ、俺はパルフィアと話せなくなるのは寂しいから、ルカマー王国に留まって欲しいが」


 寂しいって簡単にソルベシア様は口にする。ソルベシア様って、人に対する好意を躊躇なく口にする。


 私に対して可愛いなんていうし。
 ……きっと周りからの好意を受けて生きてきたのだろうな。最強の魔術師として目立った暮らしをしていて、だからこそやっかみを受けることもあるとは思う。
 それでも基本的に周りから、肯定されて生きてきたのだろう。
 ――それこそ自分からこういった言葉をかけて嫌がられるという思考がないのだろうな。
 私とは正反対の生き方をしてきた人なんだな。眩しいなと思った。
 自信に満ち溢れていて、我が道を行き、日のあたる場所を歩いてきた人。それでいて私のような者にも優しくて、私の意思を尊重してくれる人。



「……私も、ソルベシア様と喋れなくなるのは寂しいので許してもらえるなら卒業後も話したいです」

 恥ずかしいけれども、素直に自分の気持ちを口にした。眩しすぎて、影響されたからなのかもしれない。



「ははっ、本当にパルフィアは可愛いな」
「可愛くはないです」
「いや、俺が可愛いと言っているのだから素直に受け入れろ。俺はこんな時に嘘は言わない。だから可愛いんだ」
「……なんだか、ソルベシア様は強引ですよね」
「嫌か?」
「嫌ではないですけれど、可愛いなんて言われ慣れてないから照れます」

 私がそう言ったら、益々ソルベシア様は笑っていた。


「あと先ほどの話だけど、許可を取るなら流石に王太子ぐらいには話は通さないといけないがそのぐらいなら許してもらえるか?」

 そしてソルベシア様はそう問いかけた。
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