もう戻れない
秀「あ、何で電話くれたんだっけ?」
「…え、秀くん?」
晃「沙和さん?晃輝だけど」
「あ、ごめん」
晃輝に、一瞬秀くんが憑依したように思ったけど、私の勝手な勘違いだったらしく、我に返った。
「影宝会のみんなに話を聞きたいんだけどね。実は、藤吉さんには先週話を聞いてて」
晃「…うん」
「来週の日曜日に貴裕と澤村さんが別荘にいるらしいから、晃輝の都合が良かったら、聞きに行きたいんだけど」
明らかに声のトーンが変わった。絶対怒られるじゃん。晃輝は秀くんに負けじと、怒らせた時の威力は強い。しばらく手の震えが止まらなくなるくらい。
晃「今の、俺の聞き間違いかな」
「いえ。聞き間違ってません。でも、一人で行ってないから。ちゃんと法戸くんに迎えに来てもらって行ってるから」
晃「ふーん」
「…藤吉さんからも話聞けたし、法戸くんも教えてくれたことがあって、良い手がかりだったの」
晃「へー」
「…反省してます。勝手に行動して、すみませんでした」
衝撃に備えろ、私。男女関係なく完璧に論破してくる、達者な口。今日はどんな言葉が飛んでくるのか怯えていると、突然笑い声が聞こえてきた。確かに晃輝の声で、全く怒っている様子はない、ただの明るい笑い声。
晃「そんなに怯えるなら、怒られるようなことやらなきゃ良いのに。そういうとこ、兄貴と一緒だよね。こんなんじゃ、怒りたくても怒れないじゃん」
「何かごめん…。早く真実を知りたくて」
晃「うん。何が分かったのか、また道中で聞かせてよ」
「分かった」
今度はちゃんと支度して寝るらしく、明日寝坊しないように忠告しておいた。
電話を切ると、ソファに体をドサっと預ける。法戸くんに怒ったと思ったら、晃輝に怒られそうになって、忙しい。そして、秀くんも晃輝に怒られることもあるんだと、意外だった。