もう戻れない
澤「俺が真犯人である理由を聞きます」
「まずは、会長が殺された時間、澤村さんだけが事務所にいたってこと。他のみんなは見まわりに出てたから、会長を殺せない」
澤「なるほど。それから」
「それから、会長室にあった凶器の銃。あれは弾が減ってなかったからダミーで、地下室にあった銃が本当の凶器。弾が二発減ってた。その銃を使ってたのが、澤村さん」
澤「なるほど。一発は会長に、もう一発は秀さんに使ったってことですね」
「うん。地下室に銃を取りに行ってただけで、銃の練習はしてなかったんじゃないかなって」
この余裕ある口ぶりだと、さすがに手応えがないのは明らか。嘘をついているようにも見えないけど、犯人じゃない証拠もないから、澤村さんにその証拠を提示してもらうしかない。
澤「失礼ながら、反論をよろしいですか?」
「…お願いします」
澤「その言い方だと、俺が犯人じゃないって、もう分かったみたいですね」
「うんって言いたくない。良いから話して」
無口で無表情が日常の澤村さんが、私のやらかしに眉を下げ、口を押さえて笑って、さらに恥ずかしくなった。こんな恥ずかしめにあって、余計に目が冴える。
澤「どこから言うべきか…。まずは、地下室にあった銃。あれは、本当に俺が地下室で二発撃ちました。でもその証拠はないです。別の証拠として言うなら、秀さんが出所してきた日は、藤吉と昔の友人に会いに行ってました」
会長を殺した日だけに目を向けていたけど、秀くんを撃った人も同一人物だということを忘れていた。
会長と秀くんが撃たれた日、どちらもアリバイがあるのは藤吉さん。会長の日は貴裕といて、秀くんの日は澤村さんといた。となると、常に一人で行動しているのは、法戸くんしか残らない。
一番情報をくれて、一番心配してくれている人が犯人だなんて、思いたくない。誰の言葉を信じたら良いのか、分からない。
頭を抱えると、澤村さんが私の肩に手を置いた。瞬間に先ほどの情景が浮かび、肩に置かれた手を掴んで捻った。
澤「沙和さん、痛いです…」
「あ、ごめんなさい。怖くなって」
敵じゃないのに、瞬時に反応して体が動いてしまった。すると、澤村さんがニヤリと片方の口角を上げて私を見る。今度は何を言い出すのか。
澤「これです、沙和さん。何が正解か分からなくなったら、言葉じゃなくて行動を見れば良いんです」
「行動?」
澤「言葉は、いくらでも隠せる。行動は必ずボロが出ます。そこを見破れば、真実が見えますよ」