もう戻れない
「あんまり挑発しないでよ。疑う気持ちは分かるけど」
法戸くんに聞こえないように、晃輝の耳元で怒る。当の本人はなんで怒られるのか分からないような表情をしていて、余計なことを話さないように私も口を噤むことにした。
晃輝より先に家まで送ってもらい、家に入る。ソファに寝転ぶと、一日の疲れがやってきた。目を瞑り深呼吸をして、車の中での法戸くんの言葉を思い出す。
お父さんは誰かとトラブルになっていて、殺される予感がしたから法戸くんたちを逃した。トラブルを抱えていた相手として怪しいのが、澤村さん。
法戸くん以外はその日、どこにいたんだろう。同じように全員見まわりに出されていたら、澤村さんは除外される。
「…明日聞いてみようかな」
今日はとにかく気を張った一日だった。秀くんの葬儀からそこまで時間も経っていないし、まだ整理できていないことも沢山ある。
私の心もバラバラのまま。本当の犯人が見つかるまでは、多分バラバラになった心が戻ることはない。
まずは体を休めて、気力を取り戻さないといけない。
お風呂に入るのも化粧を落とすのも、気力がなく眠りに落ちた。