総長の愛が、重すぎる
「注文なら俺が聞く」

「えっ」

「総長、店員じゃないでしょ」

臣の冷静なつっこみも無視して、蓮は男子を見下ろす。

「何頼むんですか」

敬語なのに怖い。

男子は完全に青ざめた。

「え、あ、じゃあブレンドで……」

「以上で」

「まだケーキも」

「以上でいいですよね」

「は、はい……」

男子が震えながらうなずき、ひまりは慌てて蓮の腕を引いた。

「ちょっと蓮、だめだよ」

「だめなのはあっちだろ」

「なんで?」

「見すぎ」

真顔で返されて、ひまりは一気に黙る。

見すぎって、そんな。

でも蓮の目は本気だった。

その後も蓮は席に座っているはずなのに、ひまりがほかの男子客と話すたびに視線が刺さる。近くの席の男子グループがひまりを褒めれば、空気が冷える。写真を撮っていいかと聞かれた瞬間には、ついに蓮の我慢が切れた。

「だめに決まってるだろ」

教室中がしんと静まる。

男子たちはひまりより先に蓮を見て固まった。

悠真が額を押さえる。

「あーあ、ついに爆発した」

臣は苦笑し、律は当然みたいな顔をしている。湊だけが静かに立ち上がった。

けれど、その場を動かしたのは蓮だった。

蓮はひまりの手首を取ると、そのまま教室の外へ連れ出した。

「れ、蓮っ、待って」

廊下を抜けて、使われていない準備室の前でようやく足が止まる。

中へ入ると、静かで薄暗い空気が二人を包んだ。

ひまりはどきどきしながら蓮を見る。

「怒りすぎだよ」

「怒る」

「でも文化祭なんだから、あれくらい普通で」

「普通でも嫌だ」

蓮はすぐに言い返した。

「似合ってるってわかってたら、来させなかった」

「そんなの無理だよ」

「知ってる」

苦しそうに吐き出して、蓮は壁に手をつく。

ひまりを閉じ込めるほどじゃない。

でも、十分近い。

「おまえが可愛すぎるのが悪い」

「それ私のせい!?」

「俺がこんなになる原因は全部おまえ」

その理不尽さに困るのに、胸は苦しいほど高鳴る。
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