総長の愛が、重すぎる
そして開店から一時間後、その予感は見事に当たった。

教室の扉が開き、ざわっと空気が揺れる。

ひまりが顔を上げた先にいたのは、蓮だった。

いつもの制服姿。けれど目つきは、今まで見た中でも一番危ない。

後ろには悠真たちもいる。

悠真はひまりを見るなり目を丸くした。

「え、待って。ひまりちゃん可愛すぎない?」

臣も口笛を吹く。

「これは総長じゃなくても無理だろ」

律はわずかに眉を寄せ、湊は静かに目を細めた。

けれど誰より何も言わなかったのは、蓮だった。

ただ立ち尽くしたまま、ひまりだけを見ている。

その視線が熱すぎて、ひまりは思わずトレーを持つ手に力を入れた。

「い、いらっしゃいませ……」

声が少し裏返る。

すると蓮がゆっくり近づいてきた。

「その格好、何」

「えっと、クラスの衣装で」

「聞いてない」

「言う前に決まっちゃって」

「似合いすぎ」

怒っているようにも聞こえるのに、最後のひと言だけ妙に甘い。

ひまりの顔が熱くなる。

「れ、蓮、いま接客中だから」

「知ってる」

「じゃあ少し離れて」

「無理」

きっぱり言われ、後ろで悠真がまた始まったと笑う。

そのときだった。

「すみません、注文いいですか」

別のクラスの男子生徒が席から手を挙げる。

ひまりは、はっとしてそちらへ向かった。

「はい、何にしますか」

注文を聞こうと少しかがんだ、その瞬間。

ガタン、と大きな音がした。

教室中の視線が一斉に集まる。

音のしたほうを見ると、蓮が椅子を引いたまま立ち上がっていた。

その顔が、信じられないほど不機嫌だった。

「蓮?」

「近い」

低い声に、教室の空気が凍る。

注文しようとしていた男子がひきつった顔で固まる。ひまりも何がまずかったのかわからず、目を瞬かせた。

蓮はそのままひまりのところまで来ると、男子とひまりの間に割って入った。
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