きみの居ない春を、まだ知らない
湊は壁に飾られた写真を見る


そこには、夕暮れの駅が写っていた


誰もいないホーム


ベンチだけが残っている


「人がいなくなった場所のほうが、その人がいた時間を想像できるから」


「いた時間?」


「誰かが座っていた椅子とか、誰かが使っていた部屋とか」


湊は静かに話した


「その人がいるときは、ただの椅子や部屋なんだよね」


「はい」


「でも、いなくなった瞬間に意味が変わる」


玲奈は黙って聞いていた


< 24 / 129 >

この作品をシェア

pagetop