孤高の大富豪は優しい魔女に恋をする
そう言ってロンバスの首を撫でて自転車の方に歩いて行こうとする

「あれ?この馬がロンバスってどうして知っているんだ?」

「うふふ、彼が教えてくれましたから、それにあのやんちゃなテオも…」

シアは天真爛漫に笑いながら自転車に乗って行ってしまった。

ブラウンの髪の大きな目の可愛いい系の美人だった。

目の色は光の加減で金色にも見える。

ダルは虹彩もはっきり見えてその瞳に吸い込まれるようだった。

でもその大きな瞳が傷ついた鹿のようにも見えた。

何か大きな悲しみを抱えているようで、おおらかな彼女のアンバランスな雰囲気に魅せられた。

ダルの周りに寄ってくる女達とは人種が違うように感じる。

大体馬を怖がらず自分から近寄っていく女性は珍しい。

三十三歳にしてダルは女性が苦手で人嫌い気味だ。

五年前に両親が突然の事故で無くなり巨大なケイパックコンチェルンにケイパック財団を相続しその頂点に立たされたのだ。

その地位やお金やダルの容姿に群がる女達や仕事関係で少しでもつながりを持とうと寄って来ておべっかを使う男達に辟易していた。

そして二年前にこの故郷に帰ってきた。

先祖の遺産である城をホテルにして森の中の湖のほとりに超近代的な家を建てて、そこから世界を動かしている。

好きな馬の仕事は半分趣味の延長線上のような物だったが、レースに出せば優勝するような馬も育っている。

牧場は今では一つの会社として充分に機能している。

ロンドンで虚勢やおべっかを使い寄ってくる者たちを相手にするより何もしゃべりはしないが、馬達を相手にしている方がよほど人間らしい。

世界に名を知られる大富豪ダルホーガン・クロウ・ケイパックは、このスコットランドの小さな村の静かな湖畔の家から世界の経済の一部を動かしているのだ。
< 4 / 77 >

この作品をシェア

pagetop