雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

「お父さん。鹿だわ」

 エノレアは声を潜め、ガレスに囁く。

「ああ」

 ガレスは腰に付けている金属製の棒を抜くと、まっすぐにそれを鹿に向かって投げる。ヒュンッと風を切る音がして、棒は鹿の首に突き刺さった。
 声を出す間もなく一匹が倒れ、もう一匹は慌てて逃げ出した。

「やったわ! 今日は鹿肉ね!」

 エノレアは歓声を上げる。
 
「当たり前だろう。俺にかかれば、こんなの朝飯前だ」

 ガレスは得意げに胸を張る。

「そういえば、お父さん。前に送ったお菓子は食べた?」
「菓子?」
「ほら。鹿のXXに似た見た目の──」

 美味しくてさぞかしびっくりしただろうと、エノレアは期待に満ちた目でガレスを見上げる。

「ああ、あれか。まだだ」
「えー! なんで食べないのよ! すごく美味しいのに! もう、私が食べる!」

 エノレアはぷくっと頬を膨らませる。

「いーや。あれは俺がもらったから俺のもんだ」
「食べないくせに何言ってるの」

 エノレアは言い返す。
 こんな親子喧嘩もどきも久しぶりだ。
< 138 / 138 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?
  • 書籍化作品
[原題]婚約破棄された崖っぷち令嬢、婚活したら王太子に拾われる。契約寵妃のはずが、殿下が離してくれません!

総文字数/113,458

ファンタジー237ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「俺に触るな!」 伯爵令嬢のベアトリスは王宮舞踏会で、 婚約者のブルーノから突然婚約破棄を言い渡される。 なんでも、ベアトリスは友人であるローラを虐める悪女で、 ブルーノは彼女との真実の愛を見つけたのだとか。 ──ベアトリス=コーベットは婚約者の気持ちを奪われ、 嫉妬から友人を虐め、 それが婚約者本人にばれて婚約破棄された 惨めな性悪令嬢である。 たちまち悪評が広がって困り果てたベアトリスは、 婚活することに。 ところが、友人に誘われて参加した舞踏会で ブルーノとローラに鉢合わせしてしまう。 「男漁りをしてはしたない」 とふたりから糾弾されていたベアトリス。 その場に颯爽と現れてベアトリスに救いの手を差し伸べたのは、 なんとこの国の王太子アルフレッドで──。 「いらないなら、彼女は俺が貰おう。ベアトリスには俺の妃になってもらう」 「……は?」 俺様王太子×崖っぷち令嬢 ワケありの契約寵妃のはずが、殿下が離してくれません…!
表紙を見る 表紙を閉じる
 侯爵令嬢ビクトリア・フォスター、十九歳。  艶やかな金髪に、澄んだ紫の瞳。すらりとした肢体に、優雅な物腰。ダンスも刺繍も楽器も一通りこなし、外国語にも堪能。誰に対しても分け隔てなく接する、非の打ちどころのない完璧な淑女だ。  そんな彼女は、もう三年もひとりだけを見つめて恋している。それなのに、堅物のあの人は全く靡かない。  そこでビクトリアは考えた。かくなる上は、既成事実を作ろうと。  今夜、あなたをベッドに押し倒します!
表紙を見る 表紙を閉じる
リディアは魔法使いだ。 しかし、魔力供給用の奴隷──フォシニを従えておらず、本当に微々たる魔法しか使えない。 そのため、陰で「無能魔女」と呼ばれ、親とも絶縁状態になっていた。 ある日、町に出たリディアは若い男のフォシニががはした金で売られている現場に遭遇する。 同じ人間なのにひどい扱いを受けている彼を見ていられず、成り行きで買ってしまう。 ところがこの男には、とんでもない秘密があり──。 「リディアが望むなら、なんだってしてあげるよ」 お人よし無能魔女×年下最強魔法使い 愛の重い溺愛ラブファンタジー

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop