雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

 月のしずくに赤い実ひとつ
 白き大地の眠り草
 金の花びら銀の糸
 めぐる季節を待ちましょう──

 とても不思議な歌詞だと思った。
 そのまま聞いても何のことを言っているのか、全く意味が通じない。けれど、歌詞として歌うのを聞いている分にはそこまで違和感もない。

「もしかして、伝承歌か?」
「伝承歌?」
「ああ。その一族に伝わるなんらかの秘密を子孫に残すために、歌にするんだ。その一族以外の誰かが聞いてもわからないような歌にな」
「ってことは、この歌は私の本当のお母さんから伝わった歌ってこと?」

 エノレアは思わず前のめりになって聞く。
「あくまでも、可能性の話だ」
「うん」

 エノレアは頷く。
 ガレスがいてくれたおかげで寂しいと思ったことはないが、それでも学校の友達が母親といる姿を見て羨ましいと思ったことは何度もある。

(めぐる季節を待ちましょうってことは、長期熟成させる食べ物、もしくは薬かしら? できるかわからないけど、解読できないか試してみようかな)
 
 母親の痕跡を見つけたかもしれないと思うと、それだけで嬉しかった。
 
 カサッと離れた場所から、音がした。
 そちらを見ると、鹿が二頭いる。
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