雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

 詩を見た瞬間にすらすらと解説するガレスを、エノレアはきらきらとした目で見つめる。エノレアも何度もこの詩を読んだけれど、全くわからなかった。

「これは、慣れだ。一度解ければ、次に遭遇したときにすぐに解ける。できるだけ多くの問題をやり込むことが大切だ」
「なるほど」

 エノレアは納得したように頷く。
 ガレスは目を細めると、いつものようにがしがしとエノレアの頭を撫でた。

「よし。くたびれたから風呂入ってくる」
「うん。ご飯用意しておくね」
「そりゃ楽しみだ」

 ガレスはにかっと笑うと、浴室のほうに消えていく。

 エノレアはその後姿を見送ってから、台所に向かった。あらかじめ煮込んでおいたスープを調理用スプーンでかき混ぜる。

 今日のメニューはガレス直伝の、野菜を切って塩を入れただけの、極めてシンプルなスープだ。
 ちなみに、昨日も、その前日も、そのまた前日も同じメニューだった。

 初日に料理が苦手だと宣言したガレスは、本当にこれしか作れないようだ。そして、ガレスに料理を教わったエノレアもまた、これしか作れない。

「たまには何か味にアクセントが欲しいなぁ」

 エノレアは台所の中を見回す。ちょうど目に入ったのは、ガレスが何かあったときのためにとストックしている薬草の数々だ。

「そうだ!」

 エノレアはいいことを思いつき、目を輝かせる。
 棚の上の置かれた薬草の瓶に手を伸ばし、蓋を開けた。

 
   ◇ ◇ ◇
 
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