雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

 ここに来たばかりの頃、エノレアは何をすればいいのかわからず、戸惑った。
 休んでいろと言われてもどうにも落ち着かず、なんとなく手に取ったのは雑巾だ。それで熱心に床を磨いていたら、ガレスに呆れられた。

『おい、エノレア。ゆっくりしとけって言ってるのに、なんだって掃除してるんだよ』
『うーん。なんか落ち着かないから?』
『休んでろって言っただろ』
『でも、もう元気だもん』
『じゃあ、遊んでろ』
『遊ぶ?』
『ああ。よく寝て、よく食べて、よく遊ぶ。それがガキの仕事だ』

 ガレスにそう言われたとき、エノレアは戸惑った。遊べと言われても、何をして遊べばいいのか見当がつかない。
 それに、外は深い雪に閉ざされているから出かけることもできない。

 そんなときに、ガレスがエノレアにくれたのがこの使い古したお手製のクイズ帳だった。
 今まで一度も見たことのないような問題ばかりで、エノレアはすぐにこのクイズ帳に嵌ってしまったのだ。

「この問題は、まるで歌みたいだね」
「どれどれ」

 エノレアが指さした問題を、ガレスが覗き込む。

「なになに……。緑の丘に月は昇り、青き花を照らし出す──」

 ガレスは、ノートに書いてある詩を読み上げる。

「緑と青って色がふたつ入っているだろ。こういう時は、それぞれの色が何か意味を持つことが多い。この続きを読めばどこかにヒントがあるはずだ。あと、月っていうのは数字を表す典型的な暗号だ。青い花を照らし出すぐらいだからだいぶ明るくなきゃいけねえだろ? ってことは満月、即ち十五だ」
「わあ。ガレスさんはとっても物知りなのね」
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