雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
エドガーは困惑の色を見せる。
青嵐宮でトップであるエドガーは、名実ともにレニオスの右腕だ。当然扱っている業務の影響範囲も大きければ、機密レベルも高い。
「天才が来たかもしれないんだぞ。それなりの業務を与えてやらねば」
「辞めてしまうかもしれませんよ?」
「辞めたら辞めたで、その程度の人材だったということだ。それに、オリバー・ハミルトンのほうは恐らく辞めない」
レニオスは経歴書を一枚捲る。そこにはオリバーの情報が載っていた。
田舎の没落貴族出身で、家門の期待を一身に背負ってロイヤルアカデミーに入学した秀才だ。コネが蔓延る貴族の世界で完全に実力だけで、ここまでのし上がってきている。
一見すると気が弱そうに見えるが、なかなか骨はあるはずだとレニオスは睨んでいた。
「そうでしょうか? したり顔でそう言いますけどね、彼らに辞められると困るのは私なんですよ」
「ならば、辞められないようにしっかり教育して伸ばすんだな」
レニオスはバッサリと言い放つ。
「そんな簡単に──」
そこまで言いかけて、エドガーは口を噤む。ここは青嵐宮。相手はレニオス・アッシュフォード。
泣き言を言っても何も解決しないことは、エドガー自身が一番よく知っていた。
「半年以内に、一人前として使い物になるように仕上げます」
「ああ、期待している」
レニオスは金色の目を細め、口の端を上げた。