雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「よし、できた! エドガー様に報告に行ってこよっと」
お昼休みまであと一時間。香草焼は出来立て熱々を食べたいから、お昼休みに時間が被っては大変だ。
エノレアは立ち上がると、エドガーの執務室に向かう。彼の執務室の前では、ちょうどエドガーがレニオスと話しているところだった。
エドガーはすぐにエノレアに気付いた。
「エノレアさん。どうしましたか?」
「先日ご指示を受けた世界各国の経済特区についての調査ですが、概ね纏まりましたのでご報告に参りました。お取込み中のようですので、午後に再度、ご報告に参ります」
エノレアはチラッとレニオスのほうを見てから頭を下げる。
一方のエドガーは渋い顔をした。
「表面的なことを調べるだけなら誰にでもできます。私があなたにお願いしたのは、各国の経済特区の政策比較に加えてその効果と周辺地域に与える影響、新たに顕在化した課題ですよ?」
エノレアにこの業務の指示をしてまだ二週間しか経っていない。新人が二週間で纏められるような代物ではないはずだと考えたエドガーは暗に、きちんとした報告でないなら時間は取れないと伝える。
しかし、エノレアは全く動じる様子がなかった。
「もちろん、それはわかっています」
すると、黙ってふたりの会話を聞いていたレニオスがスッと目を眇めた。
「報告か。取り込み中ではないから、今から俺も一緒に聞こう」
「「え?」」
思わぬ提案に、驚いたエドガーとエノレアが同時に聞き返す。
「俺も一緒に聞くと言ったんだ。それとも、俺には報告できないようなお粗末なものなのか?」
レニオスは、わざと挑発するようにエノレアを見つめる。
「いいえ、お粗末ではないです。きちんと調査しました」
「では、エドガーの執務室で聞こう。いいな?」
「もちろんです」