雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

 冷えた瞳で見つめると、ロングレイン侯爵はぐっと言葉に詰まる。

「長居しすぎました。失礼する!」

 憤慨した様子を隠すこともなく、ロングレイン侯爵は立ち上がる。そのままずんずんと出口へを歩いて行った。
 ロングレイン侯爵とレニオスを見比べておどおどしていたリリアナが泣きそうな顔をする。

「殿下はわたくしがお嫌いですか?」
「俺がそばに置くかの判断基準は、役に立つか、立たないかだ。性欲処理ならそれ専門の女のほうが後腐れがなくていい」
「わたくしを娼婦と比べるおつもりですか!」

 リリアナの顔が怒りで赤く染まる。

「覚悟ができていると言ったのは、あなただろう?」
「……っ、帰ります! 今日のこと、きっと後悔なさいますわ!」

 リリアナはぎりっと奥歯を噛みしめると、出口へと歩いてゆく。勢いよくドアが閉まり、バシンと大きな音がした。
 その一部始終を眺め、レニオスは思わず笑ってしまった。

 あの気の強さで、よくまああんなしおらしいことを言えたものだ。
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